借入後の返済が難しい場合、何らかの債務整理を行うのが通常です。債務整理には任意整理、特定調停、個人再生、自己破産がありますが、この中でも任意整理は最もリスクが少なく、手軽なためポピュラーです。しかし、借金の返済に困窮するまでは任意整理はおろか債務整理全般に対する知識も持っていない方が大半ではないでしょうか。今回は任意整理について内容や手続き方法、メリットからデメリットに至るまで詳しくお話ししたいと思います。
目次
任意整理の効果
債務整理はそれぞれ借金の減額効果などにおいて違いがあります。任意整理は最も広く普及している債務整理方法ですが、他の債務整理と比べて借金の減額効果自体は大きくありません。詳しい内容について以下で触れていきます。
過払い金の返還
利息制限法の上限金利以上を設定している金融業者が刑事罰の対象となるようになったのは2010年以降です。これ以前に、利息制限法の上限金利を超えて支払った利息は「過払い金」と呼ばれ、返還を求めることができます。任意整理をすると返還された過払い金は元金の返済に充てられますので、それまでより負担の少ない返済が可能となります。
将来利息のカット
任意整理が成立した時点で、それ以降から発生する利息はカットされます。任意整理以降の利息については考える必要がなくなりますので、無理のない返済を行っていてもいつかは完済へとたどり着くことができます。任意整理後は3,5年をかけて返済していくのが通常です。
任意整理の流れ
任意整理とは読んで字のごとく、「借金を任意で整理する」債務整理です。裁判所といった機関への申し出は必要なく、基本的には債務者・債権者の間での話し合いによって進められます。具体的には、以下のような流れとなります。
弁護士・司法書士への相談
通常は、まず弁護士・司法書士といった専門家に相談します。その際に任意整理の今後のスケジュールについて案内されるでしょう。シチュエーションによっては他の債務整理を提案されるかもしれませ。
金融業者への通知
弁護士・司法書士から金融業者へ債務者からの任意整理の申し出があった旨通知されます。金融業者からの取り立て連絡などはこの時点でストップします。これ以降取り立ての電話に怯える必要はなくなるので、精神的負担も軽減されるでしょう。
交渉
依頼された専門家と金融業者との間で債務者の返済に関する話し合いが行われます。専門家に依頼すれば、債務者自身が金融業者と接触することはありません。
交渉成立・支払いスタート
将来利息カット・過払い金の返還・無理のない返済計画といった交渉で成立した条件のもと、借入残高の返済がスタートします。
任意整理を個人で行うことはできるのか?
任意整理自体は、弁護士・司法書士といった専門家に頼まなければできないわけではありません。正当な手続きを踏めば、個人でも行うことが可能です。しかし、手続きの煩雑さから個人で任意整理はあまり一般的ではありません。加えて最大のネックとなるのが金融業者との交渉です。お金を借りているという立場である以上、金融業者との面と向かった交渉では優位に立てず、条件のいい返済計画を立てることは難しいでしょう。費用は掛かりますが、良い結果を望むであれば専門家の協力を求めた方がベターです。
任意整理のデメリット
債務整理の中では最もハードルが低い任意整理ですが、デメリットがないわけではありません。債務整理である以上、ある程度のデメリットは覚悟しなければならないのです。代表的な任意整理のデメリットは以下のようなものです。
借金の減額効果はさほど大きくない
任意整理は債務整理の中では借金の減額効果が最も小さい方法です。借金の困窮度によっては任意整理をしても状況はさほど改善されないかも知れません。そのような場合、おそらく専門家からは他の債務整理方法を提案されるでしょう。
ブラックリスト入りは免れない
任意整理をした後は、信用情報に手続きを行った情報が記録されます。このことから新たな借入やクレジットカードの契約が約5年間できなくなる、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態となってしまうのです。向こう五年間は融資を受けることなく、収入のみで堅実に生活していく必要があるということですね。
交渉次第で結果が変わってしまう
債務者・債権者の話し合いがベースとなる任意整理では、交渉次第で結果が変わります。弁護士に手続きを依頼する場合、どれほどいい条件で任意整理が成立するかは弁護士の手腕にかかっているということです。また、申し出に応じない金融業者も稀に存在しており、最悪の場合は任意整理が成立しないことさえあります。