「く~ちゃんブーム」の再来はあり得ないのか?衰退していく消費者金融CM史

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アイフルCM

消費者金融のCMは、現在も頻繁に放送されており、街なかにも大きな看板が設置されているのをよく目にします。

しかし現在は、消費者金融のCMには厳しい規制が入り、CMクリエイターの自由が効く場ではなくなっています。

かつては、武富士ダンサーズやチワワのく~ちゃんなど、印象的なキャラクターが登場するCMが作られていました。たとえ消費者金融のキャッシングというニッチな商品のCMだったとしても、国から厳しい規制が入っているとしても、消費者金融のCMがつまらない凡庸なCMばかりではちょっとさみしい気もしてしまいます。

というわけで、消費者金融のCMは時代と共にどう移り変わっていったのか、消費者金融のCM史を振り返ってみましょう。

初代武富士ダンサーズ誕生、消費者金融華の時代~1980年末期~1990年初頭~

1983年、出資法の改訂が行われたことで、多くの消費者金融が倒産に追い込まれます。出資法改定前に23万件以上あったとされる消費者金融も、出資法改定後はおよそ3万件にまで減ったと言われています。しかし、どんな時代にも貸金業の需要が無くなるということはありません。

残った消費者金融は、お互いの生き残りをかけて、買収、合併を繰り返し、経営の安定化を行いました。そのかいあって、残った消費者金融の経営は盤石なものとなり、バブル景気が崩壊する1991年頃、消費者金融は最盛期を迎えます。多くの企業が不動産関連の負債を抱えて倒れる中、個人融資を中心に行う消費者金融には、ダメージが小さかったからです。

バブル崩壊で苦しむ人達にお金を貸し付けて、カードローン業界は成長を続けます。そんな消費者金融の元気さを象徴するのが、皆さんおなじみの「武富士ダンサーズ」です。

さらに名を上げる2002年の「武富士ダンサーズ」とは別物ですが、借金の「し」の字も出さないテレビCMからは、武富士の余裕を感じずにはいられません。

きっとこの時代のCMクリエイターも、好景気で浮かれていたはずです。

らららむじんくん♪のキラーフレーズ!~1990年代後半~

1990年台後半、消費者金融はますます盛り上がります。それまでに大手消費者金融3社は株式上場を済ませており、1993年にはアコムとプロミス。1996年にアイフルが株式上場を果たしていました。

その後、1993年にアコムがはじめて設置した自動契約機は日本中に広がり、1995年頃には他の消費者金融も自動契約機を導入しました。

その自動契約機(むじんくん)の名を一躍広めたのが、アコムの「むじんくん」です。

「ラララむじんくん(自動契約機)♪」

のキラーフレーズ、耳にしたことがある方は多いはず。このテレビCMが、「自動契約機(むじんくん)」の名を広めて、それにより利用者の数も増加しました。

自動契約機(むじんくん)を使えば、簡単にカードローン契約が可能なこと。誰にも合わなくていいことなど、カードローン利用者のニーズにバッチリ合致したのが、ヒットの理由でしょう。

この「「自動契約機(むじんくん)」のCMに出演している「チャント星人」の3人は、CDデビューも果たしています。CDが売れていた時代も感じさせますね。

チワワのせいで借金!?空前絶後の「く~ちゃん」ブーム

2000年を迎えて、世紀をまたいでも、消費者金融の時代は終わりません。

2002年にはかの有名なアイフルのチワワを用いたCMが生まれます。チワワの「く~ちゃん」が出演したCMは一世を風靡しました。

「お金がなかったら消費者金融から借りればいい」といった雰囲気を感じるアイフルのCM、貸金業者への締め付けが厳しくなった現代では考えられませんね。

まだまだ消費者金融のCMが自由だった時代だった事を感じさせます。

自身の手がけたCMでこれほどのブームを起こすことができれば、クリエイターとしても本望でしょう。

みんな真似した武富士ダンサーズ

2002年頃、おそらく消費者金融のCMで一番有名であろう「武富士ダンサーズ」が踊るCMが放送されます。

よく聞き取れない歌詞、意味のわからないダンサー集団…このCMに何人の人が影響を受けて真似したでしょうか。テレビのコント番組で、このCMをいじったコントが放送されていたのを思い出します。

武富士は問題続き

この時代、武富士は多くの問題に見舞われます。

2001年に起きた、青森県弘前市の強盗殺人放火事件。そして同じく2001年頃の「ジャーナリスト宅盗聴事件」。この盗聴事件は社長の武井保雄が主犯だったとされ、最終的には「消費者金融の社長が逮捕される」という自体にまで問題が大きくなりました。

この頃から、世間の消費者金融への風当たりが大きくなってきました。

2000年台、大手消費者金融と都市銀行が業務提携

2004年、アコムが三菱東京フィナンシャルグループと業務提携。同じ年、プロミスがSMBCコンシューマーファイナンスと業務提携を果たします。これにより、大手消費者金融の経営はさらに盤石なものとなります。

他の消費者金融も、銀行傘下に下ることで、消費者金融業界は全体的にみて安定化しています。

2006年 貸金業法改正

2006年、消費者金融業界を揺るがす大事件が起こります。

それが、「貸金業法改正」です。金融庁が貸金業法改正に至ったのは、多くのキャッシング利用者が返済不能となり、自己破産件数が増加した事に由来します。

貸金業法改正により、「グレーゾーン金利の撤廃」や、「総量規制の導入」など、多くの新ルールが追加されました。グレーゾーン金利の撤廃によって、消費者金融は余分に請求していた返済「過払い金請求」に応える事になってしまいました。

過払い金を支払うことで消費者金融の経営は一気に傾き、倒産する消費者金融が出てきます。

年々消費者金融のテレビCMに対する規制は強まっていた

実は、貸金業法改正以前から、消費者金融のテレビCMに対する規制は年々強まっていました。

消費者金融を宣伝するテレビCMにも、多くの規制が定められました。まず、CMを放送できる時間帯。

  • 17時~21時は放送禁止

キャッシングに関するCMは、子供見せると悪影響だという判断でしょうか。
そして貸金業法改正後の2006年からはさらにルールが追加され、

  • 7時から9時は放送禁止
  • 21時から22時は放送禁止

という制限が加わりました。そして放送できるCM本数も制限され、月間100本という制限が課せられました。

CM内容にも制限ががかかってしまう クリエイター冬の時代

もちろん、CM放送時間、放送本数だけでなく、CM内容にも決まりがあります。「きちんと消費者金融の意図を伝えること」そして「無意味に楽しげなCMは禁止」です。
そして、契約内容の確認、使いすぎや借りすぎに注意することなどの警告文を入れるのも絶対。消費者金融の存在は人々の生活を簡単に脅かすものです。気軽な利用が可能だという内容のCMは禁止されています。

現在の、規制にガチガチに固められたテレビCMの例を見てみましょう。

もはや何のCMか、キャッシングに関する知識の無い人にはわからないCM内容となっています。

CMで表示される「4.5~17.8%」という金利設定も、一昔前と比べるとかなり低い設定になりましたよね。

銀行カードローンCMに吉高由里子が出演する時代~現在~

現在カードローン業界において、規制ガチガチの消費者金融カードローンよりも、銀行カードローン利用者の方が多くなっています。

他社借り入れ合計が年収の3分の1以上あってはいけない、そんな法律も銀行カードローンには及びません。銀行カードローンは貸金業法の影響を受けないからです。

そして、銀行カードローンのCMも、貸金業法の規制を受けません。三井住友銀行カードローンのテレビCMを見てみましょう。

こういった、有名芸能人を使ったテレビCMを、目にする機会が増えました。

銀行カードローンにも規制の手が入る…?

こうした銀行カードローンのテレビCM放送もあってか、銀行カードローン利用者の数はとても多くなりました。そしてそれに呼応するように、銀行カードローンの審査基準は緩くなりました。多重債務者でも銀行カードローンを利用できるようにするためです。

このままでは当然、かつての消費者金融と同じ道筋を歩むことになるのは目にみえています。実際、現在銀行カードローン利用者は自己破産に追い込まれる事案が増えているほど。銀行カードローンは、国が本格的に動き出す前に、「広告内容を見直す」「審査基準を引き上げる」などして、自主規制に動いています。

クリエイターが苦しいのは消費者金融のCM業界だけでは無いかもしれません

現在のCM業界は、全体的に締め付けが苦しい時代です。

CMの表現が不適切だった場合、例えば女性蔑視だったりすると、すぐにブーイングが入って放送中止です。

クリエイターは以前よりずっと、表現の一つ一つに気を払わなければなりません。

とはいえ、特に消費者金融のCMは利用者の生活を簡単に脅かすもの。細やかな表現には特に気を使うべきものなのかもしれません。

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