特定調停は日本の民事調停手続きの一種で、支払い不能や事業を継続することができなくなり最低限度の生活費も残らないような状態の債務者が経済的に再生するために債務者と債権者もしくそのほか関係者の利害関係の調整を行うことを言います。簡単に言いますと裁判所が借主と貸主などとの話し合いの仲介を行い返済条件の軽減などを成立できるように協力し、借主が経済的に立ち直れるように支援するものです。2000年にこの特定調停法として施行が開始して一時期は急激に増加し、多額の借金を抱える人が破産せずに返済の負担を軽減できる制度として利用されました。大阪ドームの経営悪化の際にもこの特定調停が行われています。ではこの特定調停はどのような仕組みなのでしょう?
特定調停の仕組み
先ほども申しましたように特定調停は裁判所が借主と貸主の間に入って話し合いを行います。そのため、裁判所を利用した任意整理という言い方もできます。では特定調停はどのような流れで進んでいくのでしょうか。また、メリットにどのようなものがあるのでしょうか。
申し立ての流れ
まず、申し立てを行う借主は申し立てと同時に財産の状況などを示す明細書と支払い不能などに陥っていることを証明する資料、債務者に対して財産上の請求権を持っている人たちの一覧を提出する必要があります。事業者でない場合は、裁判所で相談の際に作成しているひな形がある為それを利用することで形式を整えることができます。なお、申し立てが行われると債権者は申立人への取りたてができなくなります。その後は裁判所により調停委員が選出され、調停に向けた当事者との協議に入ります。この際には申立人は何度か裁判所へ足を運ぶことになります。調停が成立すると裁判所から調停調書が作成され、そこから調停の内容に従って返済が開始されます。
特定調停のメリット
この特定調停のメリットは費用が安く、裁判所によって違いはありますが債権者1社あたり500円で行うことができます。弁護士や司法書士に頼む場合は事務所ごとに違いはあるものの、一社ごとに2万円から4万円ぐらいになります。専門的な知識が無くても比較的簡単に利用が出来、他の債務整理に比べて早く解決させることができるのも特徴です。また、債権者との交渉を裁判所の調停委員が行ってくれるため安心感が強いでしょう。手続き中の強制執行を止められるという利点もあります。
実はデメリットもある
このように裁判所が関わってくれるという強みがありますが、デメリットも少なからずあります。まず、ブラックリストには載ってしまいます。また、この調停調書は確定判決と同じ効力を持つため、支払いができなくなると給与の差し押さえなどの強制執行が行えるようになります。そのため調停成立と安心するのではなく、返済が滞らないようにしていく必要があるのです。また、過払い金などが発覚した場合、特定調停では請求できないので再度解決を図ることになります。
特定調停の事例
特定調停は先に述べましたように施行後は多くの人が利用してきました。今回はその中の一例を見てみましょう。
特定調停利用の事例、保証人の場合
この方の場合は同僚の借金の保証人になったのですが、同僚の方が自己破産してしまい、この方が代わりに借金の返済をすることになりました。しかし、この方は自分の住宅ローンの返済もある為、このままでは返済は困難になると考え司法書士に相談しました。当初は任意整理で、ということだったようですが500万円という高額な借り入れと保証人による代位返済ということもあって特定調停での債務整理を司法書士から勧められました。手続きの際に借入金額の再計算を行った所、480万円に減ったこともあって住宅ローン込みで返済可能な金額にすることができました。ただし、分割払いのでの完済までの利息は年10%で支払っていくことになりました。
特定調停利用の事例、大阪ドームの場合
かつての大阪近鉄バッファローズ、現在のオリックスバッファローズの本拠地です。ここは集客施設として野球などのイベント以外にも商業施設を持っていましたが、イベントのない日にはほとんど来場者がなく、テナントもほとんどが撤退してしまい、さらに立体駐車場の維持管理費も出来ず、結果的に運営会社が破たんしてしまいました。その後、特定調停を受けることで大阪ドームの再建を目指すことになります。その際に大阪市が買い取り、施設の売却金で借金返済に充てるといったことも計画されましたが、想定よりも大阪ドームの不動産売却価格が低く、最終的には特定調停を断念することになりました。その後は会社更生法の適用をすることになり、現在に至ります。
このように債務者と債権者が話し合いをして、お互いにとって良い状況にしていくために特定調停は行われます。特に今回例に挙げた他人の保証人での相談はいい一例でしょう。何かしらのトラブルで多額の借金で苦しんでいてもこのような助けがあることを知っておいてください。